オステオパシーとは
AAO 2014年の会長でであったロッシングD.O.のオステオパシーの紹介動画 (JOF翻訳)オステオパシーとは1874年にアメリカのアンドリュー・テーラー・スティル博士により発表された徒手医学です。オステオパシー(Osteopathy)の由来は、オステオ(Osteo)「骨」とパシー(Pathy)「病気、治療」を合わせた造語です。
オステオパシー(Osteopathy)という名前を知っている人は、大変少ないでしょう。以前は「整骨医学」と訳されていましたが、実はもっと広い意味があるのです。ですから、訳さずそのまま「オステオパシー」という名前で呼ぶことが誤解を招かず適切だと思います。オステオパシーとは自然治癒力を充分に活かして、身体が本来持っている機能性を取り戻し、健康に導く医学です。オステオパシーはアメリカでは年間5千万人もの人々がその恩恵を受けている立派な医学ですが、日本では情報不足であまり知られていません。
「カイロプラクティック」という名前は、日本でも多くの人に知られるようになりましたが、これもアメリカ医学です。オステオパシーとカイロプラクティックは、自然治癒力を活かすことや手技治療がメインであることなど、よく似ていますが、哲学やアプローチの仕方が異なります。
アメリカの医学ドクター
・メディカル・ドクター(M.D. 西洋医学)
※アメリカでは州により医療免許が異なります。D.O. とM.D. は全州で、あらゆる医療行為が認められています。
D.O. は、薬品の投与や外科手術も行うことができます
オステオパシーの哲学
オステオパシーの4つの原則
1. 身体はユニットである。
2. 構造と機能はお互い相互に関係する。
3. 身体は自己調節するメカニズムを備えている。
4. オステオパシーの合理的な治療には以上3つの原則に基づいて行われる。
現在はこの4つの原則が主流である
その他の詳細な原則
・身体は、自らを防御し、自らを修復するように、固有の能力を持ち合わせている。(自然治癒力)
・正常なる適応性が混乱する時、もしくは、環境の変化がセルフメンテナンスする能力に打ち勝つ時には、病気が続いて起こる。
・身体の液体の動きが健康の維持に不可欠である。
・神経は、身体の液体をコントロールすることについて重要な役割を果たす。
・体性コンポーネントは病気とその徴候だけでなく、病的状態へのメンテナンスに貢献している。
・全ての筋肉、骨格の調整
・内臓臓器及び内臓の支持組織(靭帯、間膜等)の調整
・頭蓋骨の調整と脳脊髄液の循環の改善
・リンパマッサージによるリンパの流れの調整
・筋肉や関節に多数存在する固有受容器に対するアプローチ
これらを手技療法によって矯正し、正常に戻すことで、体内に本来備わっている防衛力を回復させ、自然治癒力を存分に働かせることができるようになるのです。
身体のリズム
・呼吸による肺、肋骨の動き
・心臓の拍動
・脳脊髄液を循環させるための動き
・内臓が持つ固有の動き
・その他(筋肉等)の動き
全ての動きが密接に関連して、身体の恒常性(ホメオスターシス)を保とうとしています。ホメオスターシスこそが自然治癒力を発動させるもとでもあるのです。
オステオパシーは身体の歪みを正し、身体の持つリズムと可動性を正常化します。
オステオパシーのテクニック
オステオパシーにはさまざまなテクニックがあります。クライアントの症状にあわせて最善のテクニックを選択し、施術を行います。
テクニック1 ファンクショナル・テクニック(直接法)
動きの減少している関節に動きを直接的につけ正常な位置へ持っていくやり方で矯正は高速なスラストや揺動、牽引があります。
テクニック2 ファンクショナル・テクニック(間接法)
動きやすい方に動かして自然治癒力を誘う方法です。無痛で慢性痛の時に良い効果があります。
日本独自の誇張法も含まれます。
テクニック3 ジョーンズ・ストレイン/カウンターストレインR
アメリカのオステオパシー医ローレンス・H・ジョーンズD.O.によって発表された間接法のテクニックのひとつです。圧痛点に対してクライアントが最も楽で安らぐ姿勢を探し、拘縮した筋肉をさらに縮めることによって回復を促します。JOAのストレイン/カウンターストレインは、ゲーリングD.O.がジョーンズD.O.の遺志を引き継いで新たに開発されたリンパ・血管・内臓領域のへのアプローチも含まれます。
2018年JOAのストレイン&カウンターストレイン部門として、ジョーンズ・ストレイン/カウンターストレインアカデミー・ジャパン発足。
JOAの国内セミナー及びJCOの講義においても、ゲーリングD.O.監修公認の元指導を行っています。
国際セミナーでは米国同様の、レベル認定試験も行っています。
「カウンターストレインは(有)ジャパン・オステオパシック・サプライの登録商標です。(登録第4284305号)」
テクニック4 ミッチェル筋肉エネルギーテクニック
クライアントの協力により筋肉収縮を使い筋肉と関節の可動域を改善を目指します。ハードな高速スラストを好まないクライアントのための直接法のテクニックです。JOAではこのテクニックの発案者であるミッチェルファミリーとのつながりにより、オシレーション・ART・骨内ストレインなどのより臨床的な情報も含まれます。
テクニック5 内臓マニピュレーション
内臓には固有の自動力と肺呼吸による可動力があります。内臓は結合楚姫(筋膜)でつながり臓器同士影響しあい実際の原因とは違ったところで症状が出ると考え、筋膜や間膜の緊張を取り除くことにより本来臓器のもつ自動力を回復することで健康を取り戻したり、健康を増進します。従来の手技療法では脊柱を介して神経圧迫を取り除いて行っていましたが臓器を直接アプローチする事で回復をより早くサポートする事が可能になります。
テクニック6 頭蓋(クレニオ)オステオパシー
神経は脳脊髄液の循環によって活性化されています。脳脊髄液は神経の新陳代謝やホルモンの運搬に重要な役割を果たしているので頭蓋に無理な力や緊張が起こるとズレるのを防ぐために靱帯が堅くなり脳の膨張と共に頭蓋骨の縫合が開けなくなり脳を圧迫し脳神経の神経支配領域に異常が現れます。頭蓋骨から仙骨までの隔膜や硬膜を介して脳脊髄液の流れを改善し体全体の健康回復を促します。又頭蓋オステオパシーでは細胞には記憶があり事故や体の故障が精神的問題と重なり細胞の記憶として体の中にしまい込まれその代償として体に痛みを出すということから、オステオパシー的アプローチにより体性機能障害だけでなく感情トラウマも解放する施術も行います。
オステオパシーからみた健康について
私たち人間が病気をせず、健やかに過すためには何が大切なのでしょうか?
家族、他人、学校、仕事、社会などの目の前にあるものから、ふと気が付くと忘れがちになっている雲の表情、空の高さ、夜空に輝く星座、このような季節の移り変わりを動かしている自然の恩恵まで、人間に関わる全てのものとの調和ではないでしょうか。この調和が乱れたとき人は病気になります。ではいかにしてこの調和を保つべきでしょうか。それは大自然の法則あるいは社会的規範に沿って生活することです。
後者は少なからず私たちは守らざるを得ないように制約を受けています。しかし前者はどうしても後者、つまり社会的拘束により無視しがちであります。多くの場合この大自然の法則から逸脱した生活が自分たちの健康を害しています。
オステオパシーでは人間が健康に生活するためには、精神や魂を含めた身体の全ての部分が外界との調和の取れた統合によってなされると考えます。
そのためには6つのことに注意しなくてはなりません。
1. 食 事
私たちの日本が戦後の経済復興により戦前と比較してその食事内容は目覚しい変化を遂げたといわれています。
確かにその事によって栄養失調による結核などの感染症は減少しました。しかし逆にいえばそれまでには少なかった大腸ガン、痛風、糖尿病が増える要因になったとも言われています。肉食、精製された砂糖、加工食品の発達、添加物などがそれらの病気を作り出したとも言えることは間違いないでしょう。
しかし問題はもっと深いのです。現代科学の進歩により色々な土地の物が一年中食べられるようになりました。このことは本来あるべき食物の旬が無くなったのです。好きだからあるいは美味しいからといって大自然の法則を無視した食生活が最大の問題なのです。
オステオパシーでは内臓マニピュレーションや頭蓋オステオパシーにより消化器系や自律神経に対して調和を図り、食生活の改善の一助になると考えられます。
2. 運 動
近年私たちの運動不足はいろいろなメディアで取り沙汰されています。交通や電化製品の発達により私たちの日常生活における運動量は大変少なくなっています。
当然それを改善するために運動をしなくてはなりません。ただ問題はその方法と量にあります。例えば腰痛に腹筋運動が良いからといって、やたらにエクササイズをして次の日にギックリ腰になった、散歩やジョギングが良いといわれて毎日1時間以上も続けて膝を痛めた等と言う話を良く聞きます。
運動はそれ自体に害があるのではなく、自分の能力、体調を考慮せずガムシャラに行った結果です。運動は必ず休息することも重要になります。言い換えればこれもまた大自然の法則と自らの体との調和を大切にしなくてはならないということです。
オステオパシーでは筋骨格系に対して直接法、間接法、筋肉エネルギーテクニック、ストレイン&カウンターストレイン、オーソパシックメディスン等様々なテクニックで皆さんのスポーツライフにおける障害の治療とその予防に大きなサポートができると考えています。
3. 睡 眠
サーカディアンリズム、体内時計、色々な言い方をしますが、つまり人間には大自然のリズムと調和する為の機能が備わっています。その主役となるのが自律神経とホルモンです。起床、就寝、食事、排泄、一日の節目となる事が毎日一定していない人は自律神経とホルモンのバランスを崩してしまいます。その中でも24時間の3分の1から4分の1を占める睡眠は体内時計のリズムに重要な役割を果たしています。
また睡眠は成長期においては発育、成人では脳の休息と身体の修復の時間でもあります。つまりどんなに素晴らしい治療を受けようとも、適度の睡眠が取れなければ、それは徒労に終わってしまいます。
しかし中には眠りたくとも眠れなくて悩んでいる方々もたくさんいます。そういった人たちの多くは大自然の法則に反した生活があることが多いのでもう一度自らの生活リズムをチェックしてみることです。
オステオパシーでは頭蓋オステオパシー、ゼロバランシングなど多くのテクニックは神経系、ホルモンに適度な刺激を与えて、生活リズムの歪みの改善、不眠などに効果的です。
4. 感情と身体
心身医学、心療内科など最近良く聞く言葉です。現代医学においても心と身体の密接な関係が注目されるようになりました。
人の感情は自律神経、ホルモン、免疫を介して身体に大きな影響を与えます。そのことが症状として体の表面に現れてきます。その原因となるのが自分以外の人間との関係によって起こります。
「人は一人では生きられない」その通りです。家族という社会の最小単位から人類という最大単位まで人は社会の中で共存と摩擦を繰り返して適応しようとしています。その適応が上手にできない時も病気といえるのです。ちょっとした事で怒ったり、悲しんだりすることは身体のあらゆる部分に影響します。反対に身体のあらゆる部分の不調が感情に表現されます。例えば肝臓に問題があると怒りっぽくなり、逆に激しい怒りは肝臓に負担を掛けます。どちらも人間にとって良好な状態にしておかなくてはなりません。
オステオパシーでは頭蓋オステオパシー、体性感情解放、内臓マニピュレーション、ゼロバランシングは心身の解放と統合に深く寄与することでしょう。
5. 骨格構造
人間が二足歩行する為に脊柱は前後に彎曲しています。この彎曲が崩れると頭蓋硬膜の緊張、内臓への圧迫、脊柱そのものが変形します。
この様な状態を起こす原因は日常生活における身体の使い方にあります。立つ、座る、歩く、寝る人間の行動はこの4つが基本となります。この中で座っているときが最も脊柱の彎曲を崩す機会となります。あぐら、横座り、脚を組むなどは骨盤の角度が変わり腰部前彎の減少を招きます。
あるいは長時間、同じ姿勢を維持しなくてはならない作業や同じ動作を繰り返す作業によっても脊柱に悪影響を及ぼします。
オステオパシーでは全てのテクニックがこの脊柱の彎曲に対して改善するように働き、皆さんの正しい姿勢を維持するお手伝いができます。
6. 環 境
私たちを取り巻く環境が身体に影響を与えることは昔から言われていることです。温度、湿度、光、風、その他様々な自然の影響を受けています。これらによって確かに身体の不調を訴える人々がいます。しかし実は通常はこの様な環境が病気を引き起こしているのではなく、身体に問題があって、あるいは自然の営みに反する行為の結果として自然の影響を病気にしてしまうのです。そのいい例として花粉症が挙げられるでしょう。
とはいっても、現代において科学の発展により私たちの生活は快適になりましたが、自然界には存在していなかった物質や状態が問題になっています。
放射能汚染、酸性雨、温暖化現象、オゾン層の破壊全て人間が作り出した結果です。これらはどんなに私たちが健康に気をつけても病気になってしまいます。我々はオステオパスとして人々の健康に寄与するだけではなく、人間として自然界の秩序を守る努力をしていきたいと考えています。